自然エネルギーを活用した農業用温調システムの開発

ここでいう自然エネルギーとは、地下水や太陽光といったものであり、 利用してもすぐに回復するため、再生可能エネルギーとも呼ばれています。 これらのエネルギーを有効利用することで、地球温暖化対策の一つである脱炭素化に貢献することが可能になります。

本研究室では、年間を通じた農作物の育成のための農業用ハウス用の低ランニングコストの温調システムの開発を行っています。 主に地下水を熱源として用い、冬場には暖房として、夏場には冷房として利用するものになります。 学内に設置した実証実験施設や大規模数値解析により、その有効性などを明らかにすべく取り組んでいます。

システムの概略図 実証実験施設

特許第6748956号を取得

太陽光発電パネルの冷却に関する研究

太陽光発電パネルは、パネルの温度が高くなると電気変換効率が低下するといった特徴を持っています。 そのため、本来、太陽光照射エネルギーの一番大きいはずの夏場の電気の発電量が、春や秋よりも小さい といったことが生じています。

本研究室では、太陽光発電パネルの裏側にU字型のパイプを取り付けた冷却板を用いた冷却システムの開発 を行っています。 冷却時に発生する自然対流により、受動的に冷却し続けられる仕組みで、他のエネルギーを必要としない といった特徴を持っています。 また、冷却に使用した水温水としても利用が可能です。

温水利用も含めた形でのトータル的なエネルギー利得の最適値を明らかにすべく、実験及び数値解析 の両面から取り組んでいます。

システムの概略図 太陽光発電パネル

特許第6425199号を取得

感温液晶を温度センサに用いた温度計測法の開発

感温液晶とは、温度に応じて色彩が変わる物質であり、その色と温度を対応させる ことで、一般的なカメラで温度分布を計測することが可能です。 そのため、通常のサーモグラフィでは実現できない高解像度の温度分布計測が可能 になりますが、その色彩の変わる温度範囲が10℃程度と狭いといった欠点もあります。

本研究室では、感温液晶から得られるある波長の強度比を温度計測に利用することにより、 30℃以上の温度幅で計測する技術を確立しました。現在は、より温度計測精度を向上させる ために、温度換算に深層学習を用いる取り組みを行っています。 また、感温液晶微粒子を用いた液体内の3次元温度分布計測への拡張も行っています。

計測システムの概略図 温度分布計測の例

特許第6114960号を取得

蛍光を利用した非接触な熱流量計測法の開発

省エネルギー機器の開発が注目されていますが、それらの機器の内部の流動は 非常に遅く、熱電対やピトー管をはじめとする接触式の計測装置では流動状況に 影響を与えてしまうため、正しく測ることができません。

本研究室では、非接触の速度計測法と温度計測法を組み合わせるた熱流量計測法 の開発を行っています。 ここで注目している蛍光とは、蛍光物質が外部から与えられた光エネルギーを 一度吸収し、その物質固有の波長の光を放出するもので、その強度から温度を 計算することができます。また照射する光とは別の光が放出されるため、周囲の 構造物からの反射光の影響を受け難いため、比較的狭い箇所の温度計測にも利用 できるといった特徴があります。 現在、温度換算に用いる波長域の選び方に焦点を当てて、温度計測精度の改善 に取り組んでいます。

計測システムの概略図 感温液晶微粒子の蛍光の様子

複合対流の研究

一般的に機器の冷却などではポンプなどを動力とする強制対流による冷却を行います。 近年では機器の小型化や省エネルギーの観点から比較的低速度領域での冷却が必要になってきていますが、 その場合には温度差(密度差)による自然対流の影響が無視できなくなります。 このような2つの異なる対流が混在する対流は複合対流と呼ばれています。

熱設計の場では強制対流のみの理論式や実験式が使われていますが、複合対流場では熱的な境界条件によっ て流れは大きく変わるため、十分な評価や経験式は得られていません。 そこで本研究室では、複合対流について実験と数値シミュレーションの両面から流れと熱の伝わり方の特性 を明らかにすべく取り組んでいます。

複合対流の写真

GPUによる数値シミュレーション

GPU(Graphics Processing Unit)は通常のPCのグラフィックボードのことです。 この機器は簡単な並列計算機になっており、近年では様々な計算にも利用できるようになってきています。 GPUは消費電力あたりの計算速度が非常に優れているので、多くのスーパーコンピュータにも利用されつつ あります。

本研究室では、GPUによる演算の高速化や流体の数値シミュレーションのソルバ―を開発すると共に、本来 のGPUの使い方である画像表示の機能を利用して、工学的に有効な可視化手法についても取り組んでいます。

GPU関係の写真

現在実施中の公募型研究

  1. R5-R8 科学研究補助金研究 基盤研究C
    「カメラの感度特性を利用したロバストで高精度な表面・液体内温度分布計測法の開発」
  2. R4-R5 公益財団法人 JKA 機械振興補助事業
    「再生可能エネルギーを活用した農業用温調システムの効率的な育成温度調節に関する実証実験補助事業」

これまでに終了した公募型研究

  1. R2-R4 科学研究補助金研究 基盤研究C
    「深層学習を用いた高精度・リアルタイム液体内3次元温度分布計測法の開発」
  2. R2-R3 公益財団法人 JKA 機械振興補助事業
    「再生可能エネルギーを活用した農業用温調システムの開発補助事業」
  3. R2-R3 公益財団法人 高橋産業経済財団 研究助成
    「高効率発電のための太陽光パネル用の受動的冷却システムの研究」
  4. R1 公益財団法人 JKA 機械振興補助事業
    蛍光トレーサ粒子による非接触な温度・熱輸送計測システムの開発補助事業
  5. H28-H30 科学研究補助金研究 基盤研究C
    「スペクトル強度比を用いた3次元温度分布計測システムの開発」

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